日本の中でも沖縄県は独自の文化を有していますが、それには本土とは違う沖縄地方の神話や信仰が深く関係しています。
現在の沖縄県や鹿児島県の奄美大島はもともと約450年間続いた「琉球王国」の一部でした。そのため、神様や祈りに対する考え方に多くの共通点があります。
この記事では、沖縄地方における信仰の根源ともいえる「琉球神道」についてわかりやすく解説。琉球の神様や琉球神道ゆかりの地もご紹介するので、沖縄や奄美の文化に興味のある人はぜひ最後までご覧ください。
琉球神道の世界観と沖縄の神話
『琉球神道』とは、琉球王国(1429~1879年)を中心に信仰されていた多神教宗教です。
キリスト教や仏教のように開祖や教典はなく、神話や自然崇拝を重視するアニミズム的な考え方をするのが特徴です。沖縄本島を始め、先島諸島【宮古島や石垣島など】や奄美群島で信仰されてきました。
琉球王朝時代までは広く信仰される一般的なものでしたが、時代の変化とともに特定の地域に伝承される民間信仰へと姿を変えていきます。現代においても「ユタ」「ニライカナイ」「御嶽(うたき)」などが代表的なものとして残っているので、これらの単語を聞いたことがある人もいるかもしれません。
古事記ではイザナギとイザナミによる「国生み」が日本列島の始まりとされていますが、琉球神道にも同様の神話が存在します。琉球の開闢神話(かいびゃくしんわ)では「アマミキヨ」と「シネリキヨ」が久高島に降り立ち、沖縄とその周辺の島々を創造して人々を繁栄させたと伝わっています。
琉球神道と神社神道の共通点
本州の南端から沖縄県・那覇市までは直線距離で約900kmも離れていますが、琉球神道と本州で広く知られる神社神道には多くの共通点があります。
琉球神道の最高神は「ティダ」という神様で、神社神道の「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」と同様に太陽を司る神様です。
ご先祖様との繋がりや霊や魂など目に見えないものをおそれ敬う考え方も琉球神道にはあり、これも神社神道における「祖霊崇拝」と共通しています。
また、多くの神社が山や巨岩などを信仰の対象としているように、琉球神道の「御嶽(うたき)」も丘や林などの自然物が信仰の対象となっています。
神社には神に使える女性として「巫女」がいますが、琉球神道には霊力を持った「ノロ」や「ユタ」と呼ばれる女性がいることも共通点です。
琉球神道の神様
琉球神道では、神様は「来訪神」と「守護神」の2種類に分類されます。
来訪神は東にある神々の国「ニライカナイ」から訪れるとされているため、琉球神道ゆかりの地は島の東側にあることが多いです。これは、太陽が東から昇ることに関係しています。

一方で守護神は集落に宿るご先祖様たちの霊のことを指し、生者の魂が死後ニライカナイに渡ることで肉親の守り神になるとされています。
以下で代表的な来訪神を紹介します。
ティダ
ティダは太陽を司る神様で、ニライカナイの最高神とされています。「てぃだ」は、現在も沖縄の方言で「太陽」「晴れ」を意味しています。
太陽を神とする考え方は世界中にあり、エジプトの「ラー」やギリシャ神話の「ヘーリオス」なども有名ですね。
アマミキヨ
アマミキヨはニライカナイから降り立ち沖縄の島々を創ったとされる女の神様で、「アマミク」「アマミチュー」とも呼ばれます。
ニライカナイから降り立った場所は、久高島のカベール岬と伝えられています。奄美群島も琉球王国の一部であったことから、アマミキヨが「奄美」という名前の由来となったとする説もあるそうです。
シネリキヨ
シネリキヨはアマミキヨと一緒に琉球に降り立った男の神様で、「シルミチュー」とも呼ばれています。
アマミキヨとシネリキヨが最初の島民ですべての沖縄の人々は神様から生まれたという説と、1組の男女を住まわせてのちに沖縄の人々に発展していったという説があります。
アマミキヨとシネリキヨについてはうるま市の浜比嘉島にゆかりの地が残っています。以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。

琉球王国と神女(かみんちゅ)
神社と同様に、琉球王国にも宮司や巫女の役割が存在しました。代表的な神職である「ノロ」「聞得大君」「ユタ」について解説します。
ノロの役割
琉球王国では、女性の司祭である「ノロ」が活躍しました。
ニライカナイから訪れる神様は豊穣をもたらし人々を厄災から守るとされており、ノロは神様からのお告げを地域の人々に伝える役割りを担っていました。
祭祀の間は神様を憑依できると信じられており、神様を憑依させたノロは「神人、神女(かみんちゅ)」と呼ばれています。
琉球神道では人智を超えた霊的な力を「セジ」と呼び、「人間に善をもたらすセジの顕現者(けんげんしゃ)」を神様と呼んでいます。簡単にまとめると「ノロとは強いセジを備えている巫女である」ということですね。
聞得大君(きこえおおきみ)の役割
琉球王朝時代ノロは各地域に存在していましたが、全国のノロの頂点が王家のノロである「聞得大君(きこえおおきみ)」です。
初代・聞得大君は国王の妹でしたが、のちに先代の王妃が聞得大君になるよう変化していきます。聞得大君は神様と交信しお告げを国民に伝えたり、その内容を政治に反映させたりしていました。
琉球王国においてお告げの内容はとても重要で、聞得大君が国王より上の位に位置する時代もあったほどです。これには、祭政一致(宗教的な主宰者と政治の主権者とが一致していること)による宗教的支配の狙いもあったようです。
ノロとユタの違いは?
沖縄地方には、ノロの他に「ユタ」と呼ばれる巫女もいます。
ノロが神様と交信して地域の人たちにお告げを伝える役割だったのに対し、ユタは先祖の霊や人の魂と交信して依頼主に伝える役割がありました。
ノロは神様を国や地域とつなぐ役割、ユタは特定の霊や魂を依頼主につなぐ役割と考えるとわかりやすいですね。
活動するための条件 | 交信の対象 | |
ノロ | 血筋・家柄 | 守護神やニライカナイの神々 |
ユタ | 霊との交信能力が開化した人 | 祖先の霊や人間の魂 |
ノロは公的な場面で活動する神官、ユタは私的な呪術宗教を受け持つ口寄せ巫女といったイメージです。
琉球神道と奄美大島
現在の奄美大島は鹿児島県ですが、「奄美パーク」や「奄美市民俗資料館」では琉球神道の歴史にふれることができます。沖縄から海を渡って伝わった言葉や考え方の中から、「おなり信仰」を紹介します。
おなり信仰
「おなり信仰」は鹿児島県・奄美諸島と沖縄県にみられる習俗です。
「オナリ」とは姉妹を意味する琉球の方言で、兄弟を示す「エケリ」と対をなす言葉です。琉球では姉妹に兄弟を霊的に守護する力があると伝えられ、その霊性を表して「おなり神」と呼びます。
おなり信仰のわかりやすい例には、兄弟が船旅に出るとき姉妹の手ぬぐいや髪の毛をお守りとして持たせる習慣があります。また、兄弟に関する姉妹の発言が尊重される気風もありました。
琉球神道では女性は男性より霊力が高く、神様や霊を宿しやすいとされています。ノロやユタの役割りを女性が担うのも、この考え方がもとになっています。
沖縄と奄美大島の共通点
奄美大島では、神々に関する名称が以下のように伝わっています。
沖縄 | 奄美大島 | |
神々のいる場所・理想郷 | ニライカナイ | ネリヤカナヤ |
女神 | アマミキヨ | アマミコ |
男神 | シネリキヨ | シレニク |
若干の違いはありますが、発音してみると音が似ているのはおもしろいポイントですね。
奄美大島の節田(せった)集落には、アマミキヨが降り立ったとされる「阿麻弥姑神社(あまみこじんじゃ)」があり、この伝承も久高島の神話と似通っています。
現在に残る琉球神道ゆかりの地
現在でも訪れることができる琉球神道ゆかりの地を3つ紹介します。パワースポットとしても有名なので、興味を持った方はぜひ訪れてみてください。
久高島
アマミキヨ・シネリキヨが降り立ったとされる場所が、沖縄本島東南端に位置する「久高島」です。
琉球七大御嶽のひとつ「フボ-御嶽」は島のなかでも最高の聖域とされ、立入禁止区域となっています。
ニライカナイから来訪神が訪れる際に船を停めるとされる「イシキ浜」や、アマミキヨが降り立ったとされる「カベール岬」などが見どころです。
沖縄本島・南城市の安座真港より定期フェリーまたは高速船でアクセスできます。島全域が聖域とされているため、訪問の際は島のルールやマナーを守るよう気をつけましょう。
斎場御嶽(せーふぁうたき)
沖縄県・南城市にある、沖縄本土から久高島を望むよう造られた場所が「斎場御嶽(せーふぁうたき)」です。琉球王国最高の聖地で、琉球国王や聞得大君も参拝しています。
詳しい情報は以下の関連記事からご覧ください。

シルミチュー霊場
沖縄県・浜比嘉島にある「シルミチュー霊場」は、アマミキヨとシネリキヨが居住した場所と言われています。
沖縄に伝わる開闢神話(かいびゃくしんわ)で、アマミキヨとシネリキヨが子供をもうけた場所と伝えられています。以下の関連記事でも紹介しているのであわせてチェックしてみてください。

まとめ
琉球神道や神社神道との共通点、沖縄の神様などについて解説しました。
沖縄の信仰は琉球神道に基づいたものが多く、本土のものは違った独特の文化を形成しています。琉球神道についての知識があると、沖縄や奄美大島を訪れた際に少し違った楽しみ方をできるかもしれません。
沖縄地方に旅行に行くときは、美しい島々に癒やされながら琉球王国や沖縄の神話に思いを馳せてみてください。