ジブリとアニミズムの不思議な繋がりとは?アニメの中に見る神道について

コラム
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子供から大人まで幅広い世代に愛される作品を生み出し続けている「スタジオ・ジブリ」。

ジブリ作品を観たことがない日本人はいないといってもいいほど多くの人々の心に響いていますが、それには日本人の生活に根付いている「アニミズム」や「神道」の考え方が関係しているかもしれません。

ジブリには、自然界・精霊・神話的な存在など、アニミズムと呼ばれる古代の信仰に関するテーマが多く、『千と千尋の神隠し』や『もののけ姫』など日本文化と深く結びついた作品も多いです。

この記事では、ジブリ作品とアニミズムの不思議な繋がりに焦点を当て、日本アニメに見られる神道の影響について解説します。ジブリの魅力に触れながら、日本のアニメーション文化とアニミズムの関係について見ていきましょう。

ジブリアニメの魅力とアニミズムとの関連

まずは、ジブリアニメの魅力とアニミズムがジブリに与えた影響について簡単に解説します。

ジブリアニメの魅力は深いメッセージ性とキャラクター

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ジブリアニメといえば、細部にこだわった美しいアニメーション技術はもちろん、深いメッセージ性とキャラクターが魅力ですね。

登場人物たちの成長や感情の描写がリアルで感動的であり、視聴者は共感しやすいキャラクターにぐっと引き込まれます。テーマは作品ごとに異なりますが、環境保護・人間関係・自己発見など多くの重要なテーマを取り上げており、私たちに深いメッセージ性を訴えかけます。

ファンタジー感の強い作品から現実的な世界を描いた作品までジャンルも多岐に分かれ、30年以上のにわたり多くの人々を感動させ続けています。

アニミズムがジブリに与えた影響

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アニミズムとは「自然界や物体に精霊や魂が宿る」という考え方で、岩、木、川、風、火などに宿った精霊や魂は、物事の運命や状態に影響を与えると信じられています。

ジブリ作品にはアニミズムの影響を受けていると考えられる描写が多く、『千と千尋の神隠し』に登場する川の神様、『ハウルの動く城』に登場する火の精霊カルシファーなどがわかりやすい例ですね。

『もののけ姫』に登場するコダマや『となりのトトロ』に登場するトトロにも、森の精霊的な要素を感じとれる部分があります。

アニミズムでは自然界との調和が重要視され、自然のバランスを乱す行為や浪費はよくないものとされています。『もののけ姫』や『風の谷のナウシカ』のように、ジブリ作品には「自然と人間の共存や対立」をテーマとする作品が多いですが、これにはアニミズムからの影響があるのかもしれません。

ジブリ作品に見られるアニミズムの要素

ジブリ作品の中でも、特にアニミズムの要素を感じる部分をピックアップして見てきましょう。ここでは、以下の4作品をご紹介します。

  • 千と千尋の神隠し
  • もののけ姫
  • となりのトトロ
  • 風の谷のナウシカ

千と千尋の神隠し

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2001年に公開された『千と千尋の神隠し』では、主人公である千尋が不思議な神秘的な湯屋を舞台とした異世界に迷い込みます。そこではさまざまな神話的な存在や精霊が登場し、千尋との交流が物語を進めます。

千と千尋の神隠しはアジア的な描写が多く、特に日本におけるアニミズム的描写がわかりやすく見られる作品です。自然界の力を具現化した存在であるさまざまな姿の神様や、川の神様であるハクとの交流シーンは、人間が自然と共存していくために尊敬や畏敬の念を払う必要性を強調しているかのように見えます。

千尋の努力と信念によって神様が復活する描写も、自然の力と人間の関係の複雑さを示しアニミズムのテーマに合致していますね。

『千と千尋の神隠し』は、アニミズムを通じて自然界と人間とのあり方を幻想的に描いた作品です。どんなストーリーかといわれたら説明が難しい部分もありますが、日本人の信仰心が丁寧に描かれていると感じられます。

もののけ姫

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1997年に公開された『もののけ姫』は、日本を舞台にして自然環境と人間社会の対立を描いており、アニミズムの要素が際立って見られます。森の精霊や巨大な動物たちが登場し、雄大な自然への尊重が重要なテーマとして探求されています。

もののけ姫のストーリーでは、山犬に育てられたサンと呪いを解くために奔走するアシタカの交流を中心として、人間と自然、それらの間に存在する精霊や神秘的な存在との調和や対立が描かれています。

サンの育ての親であるモロやオッコトヌシをはじめとする森の主たち、神様であるシシガミなどは自己意識を持ち、物語に深く関わってきます。これはアニミズムの核心的な概念である「自然界の存在が生命を持つもの」として尊重されることを表しています。森の精霊であるコダマにもアニミズムの要素が見られますね。

人間サイドでは発展のために自然界を破壊し神殺しを謀るエボシや、帝から勅命を受け暗躍するジコ坊など、人間の欲望や産業化が自然破壊をもたらすことへの警鐘ともいえる描写が多いです。

『もののけ姫』は、アニミズムの重要な要素である自然崇拝を通じて人間と自然界が調和し、共存する方法について焦点を当てた作品といえるでしょう。

となりのトトロ

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1988年に公開された『となりのトトロ』では、主人公であるさつきとメイの姉妹が田舎の家に引っ越し、そこで森や川、畑など自然環境と触れ合う姿が描かれています。

家族は古びた民家に住んでおり、周囲は田園風景に囲まれています。作中ではトトロという精霊のような存在が登場し、姉妹との交流を通じてストーリーが展開していきます。

トトロは大人にはその存在が確認できない側面があり、見えないものに対する精霊信仰的な描写はアニミズムに通じるものが感じられますね。まっくろくろすけやネコバスといった超常的な存在の見逃せません。ほこりやススに生命が宿っている点も重要なポイントです。

『となりのトトロ』の描写には、子どもたちの視線を通じて実利を除いた「豊かさ」についてのメッセージ性が感じられます。

風の谷のナウシカ

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1984年に公開された『風の谷のナウシカ』では、腐海に飲み込まれる世界の中で生き延びるにはどうするかという問いを投げかけています。

戦争として人間たちの対立を描く中で、王蟲を頂点とする昆虫や腐海での自然環境、彼らとコミュニケーションをとるナウシカの能力にはアニミズムが強調されています。

ナウシカがオームと深い共感を持ち、オームもナウシカに対して友好的な行動を示す関係には、人間と自然界との調和が象徴されているかのようです。

戦争により崩壊した文明や自然、腐海などの表現には自然に対する畏敬の念が感じられ、ラストシーンには腐海が正常な森に戻ることを示唆する描写もあり、自然界に対する尊敬が感じられます。

ジブリだけでなく日本のアニメはアニミズムが深く関わっている?

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神道やアニミズムの要素はジブリ以外のアニメ作品にもよく見られます。

日本の漫画やアニメ文化には物体や動物に魂が宿っているキャラクターや、妖怪や使い魔、精霊といった概念的なマスコットが親しみやすい見た目で頻繁に登場します。

また、一部の作品には、死後の世界や霊界など霊的なテーマを取り上げており、アニミズムの概念における魂の存在に焦点を当てているともいえる側面があります。

ご先祖様や師匠キャラが強い力を持っている描写にも、祖霊崇拝の背景が日本に根づいていることが関係しているのかもしれませんね。

このように、日本のアニメ作品には日本独自の文化で育ってきたクリエイターたちの背景にある信仰心や道徳心が見られることがあります。

海外で有名なDCコミックやマーベルコミックが聖書やキリスト教を知っているとより理解が深まるように、日本人の根底にある神道について触れておくことで、アニメ作品をまた違った視点で楽しめるかもしれませんよ。

アニミズムの視点からジブリ作品をより深く楽しもう

日本人がジブリ作品にどこか惹かれるのは、テーマの根底にアニミズムの要素を感じるからなのかもしれません。

私たちは普段意識をしていないだけで、十分に信仰心を持って生活しています。食事前のいただきますや、お正月の初詣、長く使っているものに愛着がわくのは日本人なら当たり前に持っている感覚です。

日本の文化や信仰の背景にあるアニミズムに触れることは、アニメを見る上でも新しい発見をもたらし、あなたの日常も豊かにしてくれるかもしれません。

今度ジブリ作品を観るときには、宮崎駿監督やジブリに関わるクリエイターたちの背景にある考え方にもぜひ目を向けてみてください。

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