【神在月の島根旅行記】憧れの神迎神事と八塩折の酒を求めて

神在月の島根旅行記
体験記
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2023年11月、私はついに長年憧れ続けた神在月の出雲を訪れました。この旅の目的は主に2つ。稲佐の浜で行われる「神迎神事(かみむかえしんじ)」を見ることと、ヤマタノオロチを酔わせたと伝わる「八塩折の酒(やしおりのさけ)」を飲むことです。

神社巡りにハマってからいつかは訪れたいと思っていた、この特別な時期の島根の様子についてお届けします。

11月の島根県は「神在月」と呼ばれる

旧暦の10月は一般的に神無月(かんなづき)と呼ばれますが、島根県の出雲地方だけでは「神在月(かみありづき)」という特殊な呼び方をします。これはこの時期に、全国の八百万の神々が出雲大社に集まるためです。

旧暦の10月:現在の10月下旬から12月上旬

他の地域では神々が不在になることから神様のいない月=神無月と呼び、出雲では神々がいる月=神在月となります。自分はこの由来を知ったとき「なんてロマンがあるんだろう」と深く感動し、それからいつかは神在月の島根県を体験してみたいと夢見ていました。

この時期の出雲大社では神々を迎える祭り「神在祭(かみありさい)」が1週間にわたって行われ、さまざまな祭事が催されます。神在祭は旧暦を基準に開催されるため、私が訪れた2023年では11月22~29日にかけて行われました。

2024年のスケジュールは以下の通りなので、この記事を読んで気になった人はぜひチェックしてみてくださいね。

【2024年神在祭の日程】
・神迎神事:2024年11月10日(日)19時~
・神在祭:2024年11月11日(月)・15日(金)・17日(日)
・縁結大祭:2024年11月15日(金)・17日(日)
・神等去出祭:2024年11月17日(日)、11月26日(火)

神迎神事について

今回の訪問で、私がもっとも体験したいと思っていたのは「神迎神事(かみむかえしんじ)」です。

神在祭では日本中の神々が海の向こうからやってきて、出雲大社の西にある稲佐の浜から上陸すると考えられています。この神々を迎える儀式が神迎神事で、神在祭の始まりを象徴する祭事として重要な役割を担っています。

稲佐の浜に到着した神々は神職たちによって出雲大社へ導かれ、その後、出雲大社で人々のためにさまざまな議題を話し合うとされています。

八塩折の酒について

もうひとつの目的である「八塩折の酒(やしおりのさけ)」は日本神話に登場する特別なお酒で、スサノオがヤマタノオロチを退治する際に用いたとされています。

スサノオはヤマタノオロチを退治する準備として8つの門を設置し、それぞれの門に度数の強いお酒=八塩折の酒を入れた桶を置きました。オロチはこのお酒に誘われてそれぞれの桶から酒を飲み、すっかり酔いつぶれて動けなくなったところをスサノオに討ち取られたと伝わっています。

出雲地方はこのヤマタノオロチ退治の舞台となった場所であり、松江市にある國暉酒造(こっきしゅぞう)では八塩折の酒を再現したお酒「八塩折(やしおり)」を販売しています。

八塩折とは「何度も繰り返し精製する」という意味で、國暉酒造では醸した酒を仕込んでは搾るという再仕込の工程を何度も繰り返し、濃度調整を一切せずに何年も掛けてこの伝説の酒を再現しています。

私がこのお酒の存在を知ったのはもう10年以上前ですが、通販などでは手に入らずなかなか飲む機会に恵まれませんでした。普段から日本酒を愛飲しているため、今回島根を訪れるにあたり、ぜひ味わってみたいと思っていた1本です。

【2023年】神在月の出雲体験記

ここからは実際に島根県を訪れたときの体験記をご紹介します。

11月21日:大阪発→松江着。夜の市街地を散策後に日本酒三昧。

この時期は大阪のゲストハウスで住み込みをしており、オーナーさんに休みをいただいて昼前に出発。松江行きの長距離バスに乗り込んで、5時間半ほどのバスの旅へ出発しました。

バスはスムーズに運行し、夕方になり松江に到着。まずは予約していたホテルに向かいチェックインを済ませて一息つきます。

その後、だいぶお腹も空いていたので、地酒を飲めるいい感じの居酒屋を探しにぶらぶらと出かけることにしました。ついでに夕景でも撮りに行こうかな、とカメラを片手に宿を出ます。

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松江市街地にかかる橋からの夕景

写真を撮りつつ適当に歩いているといい感じの店構えの居酒屋を発見。店へ入ると女将さんが温かく迎えてくれました。日本酒3種飲み比べセットがあったので注文すると、おすすめの地酒をセレクトして注いでくれます。自分の他にはお客さんも一組しかおらず、女将さんとゆっくりお話をする機会を得られました。これも一人旅の醍醐味ですね。

このときは移住先を探していたこともあり、ずっと島根県に住んでみたかったことや神迎神事への憧れを伝えていると、なんとこの女将さんはこの地域の何かしらのコミュニティの会長さんとのこと。移住の現実性についてお話してくれて、相談事があればと名刺までくれました。

その他にも松江市内で試飲ができる酒造やこの時期の島根県の盛り上がりなど、いろいろな話題を話してくれて、気づけばもうワンセット飲み比べを注文。さらにお酒を追加して合計8杯も飲んでしまいました。どう考えても初日から飲み過ぎです。

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当時のストーリー

かなりべろべろになってしまいましたがとても気分良く酔え、出会いに感謝の日となりました。やはり島根はご縁を結ぶよいところですね。

11月22日:松江散策後に出雲大社へ向かう。遂に神迎神事へ!

二日酔いが心配でしたが無事に起床し、翌日は朝から松江市内を散策しました。まずは昨日の居酒屋で教えてもらった酒造を巡ろうと市街地へ向かいます。

最初にお邪魔したのは「豊の秋」を手がける米田酒造。

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米田酒造の外観

朝早かったですが中に入るとスタッフさんが1人いて、試飲について聞くと快く受け入れてくれました。しかも無料で4杯です。完全に神ですね。

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試飲させていただいた4種類の「豊の秋」

昨日もたっぷり飲んでいますがまあせっかくの旅だし飲まんといかんだろう、ということでありがたくいただきます。どれもスッキリとしながら日本酒らしい風味を感じる味わいでおいしかったです。

豊の秋酒造を出たあとは、お目当ての國暉酒造へ向かいます。実は八塩折が試飲できるかまでは調べてなくて1本買えればいいかなと思っていたのですが、なんとここでは販売しているお酒の全種類の試飲が可能でした!

しかも全部無料という太っ腹ぶり…八塩折はクラスが赤・黒・紫の3つに分かれており、一番上の銘柄である「紫」は200mlで5,000円もする高級酒なのですが大丈夫なのだろうか…

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國暉酒造のお酒たち

若干申し訳ない気持ちになりましたがいい機会なので次々とお酒をオーダー。八塩折は全3種類飲みましたが、やはり熟成年数の長いもののほうが濃厚かつ丸みがあって深みを感じますね。日本酒とは思えない濃厚な風味とカラメルのような甘みに衝撃を受けること間違いなしなので、ぜひ皆さんにも機会があれば飲んでほしいです。

また、他の銘柄も試飲させていただきましたが、個人的には「國暉 -BEIGE-」に感動しました。國暉酒造では基本的に辛口のお酒を作っているそうですが、こちらは甘口にチャレンジした銘柄とのこと。呑み口はスッキリとしていながらも華やかな香りが広がるお酒で、リーズナブルな価格も相まって日常的に飲みたい味わいでした。

こちらは通販でも買えるので、気になった人はぜひチェックしてみてください。

ということで朝からたらふくと日本酒を楽しみ、その後は酔い覚ましがてら松江城まで散歩に向かいます。

松江城は日本に12城しか残っていない現存天守の一つで、400年以上の歴史を持つ立派なお城です。松江城前には、出雲松江藩・初代藩主の松平直政(まつだいらなおまさ)を祀る「松江神社」や、明治天皇が臨時に滞在する行在所(あんざいしょ)として建設された「興雲閣(こううんかく)」などもあり、見どころたくさんでした。

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松江城の外観

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おしゃれな興雲閣

興雲閣は無料で見学可能で、松江城は天守入場料が680円かかります。せっかくの機会なので支払い、天守閣まで上って景色を一望。各階には資料も豊富に展示されており、豊かな時間を過ごせました。

松江城周辺を見学し酔いも冷めてきたところで、お次は「小泉八雲記念館」へ向かいます。

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小泉八雲記念館

小泉八雲はギリシャ生まれの作家・教師で、本名はパトリック・ラフカディオ・ハーンといいます。日本人女性の小泉セツと結婚して日本に帰化し、「小泉八雲」という日本名で怪談や民話を広く紹介しました。「耳なし芳一」や「雪女」など、今ではだれもが知る名作も小泉八雲の作品です。

記念館では彼の生涯・私物・作品などが展示されており、とても見ごたえがありました。自分は「怪談」くらいしか呼んだことがないミーハーですが、他の作品も読んでみたいと長年思ってはいるのでこの機会にチェックしたいと思います。

酒造やらお城やら記念館やらと松江市で見たかったものは大体見学できたので、松江しんじ湖温泉駅から一畑電鉄で出雲大社へ向かいます。道中は宍道湖を望みながらのゆったりとした電車の旅。もっと時間があれば宍道湖の夕日なんかもゆっくり写真を撮りたいところでしたが、まあそのうちの機会に取っておこうということで。

出雲大社前駅に着くと門前町は多くの人で賑わっていました。いつもの混み具合がどんなもんだかは知らないけれどさすが神在祭と思える混み方。

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出雲大社を訪れるのは約10年ぶりで2回目。個人的に国津神系の神社が好きで、その頂点ということで自分の中での推し神社になっています。伝説だと思われていた古代巨大神殿の証ともいえる宇豆柱(うずばしら)が見つかったニュースにかなりロマンを感じているんですよね。前回はこの宇豆柱だったのではないかともいわれている巨木が見れる三瓶小豆原埋没林公園も訪れましたが、こちらもおすすめのスポットです。

以前訪れたときに写真はたっぷり撮ったので、今回はあれもこれも撮りたい欲は少なめ。広大な境内をゆっくりと散策し、清らかな空気に心が癒やされました。

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出雲大社は二礼四拍手一礼なのがおもしろい

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宇豆柱の跡

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立派な大注連縄

あらかた見学したところで夕方に稲佐の浜へ向かいます。この日は天気も良くて夕景がとてもきれいでした。

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稲佐の浜の弁天島

この年はまだまだコロナの影響が残っており、公式サイトを見ても神迎神事が一般人に公開されているのか把握できず不安な状態でした。まあ見られないならしょうがないだろうと思いながらも様子見のつもりで稲佐の浜に向かうと、なんと多くの人がロープの前で場所取りをしている!周りの人に聞いてみるとどうやら普通に見学できるみたいです。来てよかった~。

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参列はできないけれど離れた場所からの見学は可能

神迎神事は19時からなのでまだ2時間ほど時間がありましたが、今から場所取りしておけばかなり前の方のいいポジションを取れそうだったのでここで待つことに。場所取りしている人はやはり写真好きな人ばかりで、隣のおっちゃんとカメラトークしたりしながら時間を潰します。

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2時間前でもすでに人は多め

お互いに荷物を見あったりできたので、トイレ行きたいときとかにとても助かりました。浜辺の様子を写真撮ったりしながらのんびりと過ごします。

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時間つぶしにエモい写真を撮る

おっちゃんはカメラのレンズを作っている会社で働いてた経験があるとのことで、昔ながらのフィルム現像の話とかいろいろ聞けておもしろかったです。島根県中のお祭りを撮影に行くのが趣味みたいで他にもおもしろそうなイベントをたくさん教えてくれました。

そして2時間の待機を経て辺りが暗くなってきた頃、ついに神迎神事が始まります。浜で御神火が焚かれ、注連縄が張り巡らされた斎場の中に神職たちが集まってきます。

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神迎神事の様子

神職たちは白い装束に身を包み、儀式は厳かな様子で進行しました。儀式自体は20~30分ほどで完了しましたが、この瞬間に神様たちがこの地に降臨していると考えるととても貴重な機会に身を置けたことに感動しました。

神迎神事のあとにも出雲大社では他の神事が行われていましたが、2時間待機であまりに疲れていたのとこれから電車で松江まで帰らなくてはいけないため見学する元気はなく…そのまま駅へ向かいます。

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夜の出雲大社

そしたら駅がめっちゃ混んでて、夜は1時間に1本しか電車がないのに人が多すぎて1本見送ることに。お腹も空いていたので門前町でのどぐろ丼をいただきのんびりと過ごします。松江の宿に戻ったときにはすっかり疲れ果てており、シャワーを浴びてすぐに寝落ちしました。

11月23日:足立美術館と玉造温泉を巡る

本日は島根旅行の最終日。昨日の疲れも残っていたためチェックアウトのギリギリまでベッドでゴロゴロとして、荷物をまとめた後はフロントに預かってもらいます。その後は電車JR安来駅まで向かい、駅からの無料シャトルバスで「足立美術館(あだちびじゅつかん)」へ向かいました。

足立美術館は島根県安来市にある美術館で、美しい日本庭園と日本画のコレクションが世界的に有名です。自分は美術に明るくないので実はそこまで興味はなかったのですが、島根を訪れた人や海外の人から話を聞くことが多かったので、いい機会だなと思い訪れることにしました。

足立美術館の入館料は大人 2,300円で結構お高め。それに見合うだけの貴重なものが収蔵されているのはわかるのですが、正直自分にはちょっと良さがわからなかったです。バスの時間的にそこまでゆっくりできず、巻きで回ることになってしまったのも失敗でしたね。足立美術館に行くなら1日がかりでプラン組んだほうがよさそうです。

とはいえ有名な横山大観の作品たちや美しい日本庭園は見ごたえがありました。落ち着いてゆっくり訪れればかなり満足できそうな素敵な場所だと思います。

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窓が額縁のようになった生の額絵

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美しい日本庭園

美術館を1時間ほどでさっと見学し、その後は再び電車に乗って玉造温泉へ。この温泉街も一度は見てみたかったのでプランに組み込みましたが、大阪へ帰るバスの時間も決まっていたのでこの日はいろいろとかなり巻きになってしまった…

そして実際に行ってみたらJR玉造温泉駅から温泉街までは結構距離があって歩くのが大変でした。バスも出ているのですが時間が合わず、散歩がてら川沿いを進んで温泉街へ向かいます。

平日だったため温泉街は人も少なかったですが、足湯なんかも豊富にあってなかなか雰囲気の良いところでした。

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温泉街の様子

温泉街を進んでいくと玉造湯神社(たまつくりゆじんじゃ)を発見。立派な神社で見応えがあり、ほどよく紅葉していて木々もきれいでした。拝殿の両脇に立っている杉の木がいい感じです。

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玉作湯神社・拝殿

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ちょうど紅葉シーズンでいい感じ

参拝後はせっかくなので温泉に入ろうと思い、日帰り入浴600円とリーズナブルな「玉造温泉ゆ〜ゆ」へ。温泉は好きなので本当はゆっくりしたかったのですが、時間もないのでさっとカラスの行水で出ることに。今日はいろいろと予定を詰め込んでしまってなかなかゆっくりできなかったのが失敗でしたね。まあいろいろ行きたかったところに行けたので良かったです。

その後は電車で松江の宿に戻って荷物を受け取り、そのままバスで大阪へ帰宅。夜に到着したあとはオーナーさんたちとおみやげに買った日本酒と島根のおつまみで乾杯しました。帰ってきてからのお土産も旅の醍醐味ですね。

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島根県の名産品たち

お酒は【國暉 -BEIGE-」とたまたま見つけたおしゃれなどぶろく「D-269」、それに島根県内限定販売らしいウイスキー「右田(みぎた)」を購入しました。出雲大社のお神酒である「八千矛(やちほこ)」が欲しかったのですが荷物になるからと後回しにしていたら駅とかになくて絶望…通販でも見つからず、これはまたそのうちどっかでチャレンジします。

おつまみはこっちのほうの名物である「あご野焼き」。あごとはトビウオのことで、あご野焼きはトビウオのすり身を炭火で焼き上げたものです。

もう一つはお世話になっているゲストハウスオーナーさんからのリクエスト「赤天」。魚のすり身に赤唐辛子を練り込んだピリ辛なかまぼこみたいなやつです。こいつの存在は知りませんでしたが島根のソウルフードとして有名みたいですね。マヨネーズと相性抜群でした。

神在月の島根旅行記まとめ

旧暦10月の島根県は、日本の中でも特別な場所となります。憧れだった神迎神事を見学できて、念願の八塩折の酒も飲めたこの旅は、自分にとって本当に有意義なものになりました。

これから出雲大社を訪れる予定の方々も、ぜひこの神在月の特別な体験を味わってみてください。島根県のお酒や特産品もチェックしておくと、あなたの旅がより楽しいものになりますよ。

この記事を書いた人
Tomo

「神社メディア・アニミズム」管理人。Webディレクター、Webライター、写真家として活動中。
神社巡りと世界遺産巡りのために47都道府県を制覇した後、世界の文化を見に60ヶ国以上を旅しました。
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