日本には数多くの祭りがありますが、その中でも「京都の祇園祭」「大阪の天神祭」「東京の神田祭」は日本三大祭りと呼ばれ多くの人に親しまれています。
しかし、「日本三大祭りって何のためのお祭りなの?」「それぞれのお祭りの見どころは?」と疑問に思っている人も多いはず。お祭りの歴史的な背景や独自のイベントを知ることで、よりいっそう日本三大祭りを楽しめること間違いなしです。
そこでこの記事では、日本三大祭りの魅力についてわかりやすく紹介します。地方に根付くさまざまな「三大祭り」についても解説しているので、お祭り好きの人はぜひ読んでみてくださいね。
京都の「祇園祭」
毎年7月に京都で行われる「祇園祭」では、山鉾(やまほこ)と呼ばれる華麗な装飾が施された大きな山車(だし)のパレードが有名です。
祇園祭の由来や特徴について詳しく見ていきましょう。
「祇園祭」の由来と歴史
八坂神社の祭礼である祇園祭は、もともとは疫病・祟りを鎮めるために始まりました。
貞観11年(869年)に全国で疫病が流行した際、人々はその原因が牛頭天王の祟りであると考えました。そこで66本の鉾(ほこ)を立ててお祭りを行い、神輿を平安京の庭園である神泉苑(しんせんえん)に送って祟りを祓おうとします。
この催しは「祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)」と呼ばれ、天禄元年(970年)以降毎年の行事となりました。
年数を重ねるごとに地域の人々も積極的に関わるようになり、庶民からの芸能の奉納も増加。その後は山鉾巡業がメインとなって、さらに大きな盛り上がりを見せていくこととなります。
疫病・祟りを静めるための行事だった祇園御霊会は、その要素を失うことがないまま山鉾巡行を中心とした町衆のお祭りとして確立され、現在の「祇園祭」へと続いていきました。
「祇園祭」は豪華に装飾された山車による山鉾巡行が見どころ!

出典:photo53.com
祇園祭は例年7月1~31日にかけて約1ヶ月間行われますが、特に7月17日と24日に行われる山鉾巡行は祇園祭の最大の見どころです。
山鉾とは神社の祭礼に引かれる大きな山車のこと。もともとは疫神を追い払うための「鉾」と見せ物として登場した「山」に区別されていましたが、今では「山鉾」としてまとめて呼ばれることも多いです。独自のデザインや装飾が施された豪華な外観は、「動く美術館」と称されることもありますよ。
山鉾巡行は17日の「前祭(さきまつり)」と24日の「後祭(あとまつり)」に分けて行われます。
前祭で山鉾巡行を行うのは、神輿にのった神様が市中の穢れを払い清めて回るためです。巡行後には神様を御旅所(おたびしょ)へお迎えする「神幸祭(しんこうさい)」が行われますよ。
その後の後祭で再び山鉾が市中を巡行し、巡行後はお迎えした神様を八坂神社にお返しする「還幸祭(かんこうさい)」が行われます。
「祇園祭」の観光体験の魅力

出典:photo53.com
祇園祭の見どころは、なんといってもその規模の大きさにあります。日本の祭りの中でも特に格式が高く、多くの人々が訪れる活気ある様子は一度は体験したい熱量です。
山鉾や神輿の華やかな装飾は見るものを魅了し、祭りの雰囲気は活気に満ちていますよ。前祭・後祭の巡行だけでなく、その1〜3日前に行われる「宵山(よいやま)」も祇園祭に欠かせない楽しみのひとつ。
前夜祭にあたる行事で、祇園祭の名物のひとつである「粽(ちまき)」(笹で作る厄除けのお守り)や御朱印の授与も受けられます。
祇園祭は地元の食や文化も楽しめ、美しい風景や写真撮影のチャンスも豊富です。日本の夏の風物詩としての体験も含め、祭りの魅力を存分に味わうことができるでしょう。
公式HP | 公益財団法人祇園祭山鉾連合会 |
開催日時 | 例年7月1日~31日 |
開催場所 | 八坂神社境内とその周辺 |
大阪の「天神祭」
毎年7月に大阪で行われる「天神祭」は、1000年以上の歴史を持つ伝統行事です。特に有名なのは川上りの船渡御(ふなとぎょ)で、御神体や神霊の移った神輿を乗せた船が大川を進む様子は迫力満点です。
天神祭の由来や特徴について詳しく見ていきましょう。
「天神祭」の由来と歴史
「天神祭」の見どころは多くの船が行き交う船渡御
天神祭は6月下旬~7月下旬にかけさまざまな諸行事が行われますが、特に以下の4つが大きな見どころとなります。
- 前夜祭として開かれる「宵宮(よいみや)」(7月24日)
- 大阪天満宮にて行われる「陸渡御(りくとぎょ)」(7月25日)
- 大川にて多くの船が行き交う「船渡御(ふなとぎょ)」(7月25日夕方~)
- お祭りの最後を飾る「奉納花火」(7月25日夜~)
陸渡御で川岸までお送りした御鳳輦は船に移され、船渡御の行事へと進みます。船渡御では大量の船が大川に勢ぞろいし、周辺にはかがり火や屋台が並び多くの見物客でにぎわいます。
祭りの最後を飾る「奉納花火」では、天神様にちなんで梅鉢の形に開く「紅梅」というオリジナル花火が見どころ。このときの水面に映る明かりと夜空に浮かぶ花火の美しさは「火と水の祭典」とも呼ばれ人気を集めていますよ。
「天神祭」の観光体験の魅力
天神祭の大きな見どころは、大川で行われる船渡御神事です。豪華に装飾された船が大川を行き交う姿は圧巻で、夜には船上の灯りと花火が幻想的な光景を演出しています。
最終日である25日が特に盛り上がりますが、前夜祭までの期間にも魅力がたくさん。例年23日に行われている、女性だけで神輿を担ぐ「ギャル神輿」も注目の催しです。
25日の大川沿いには特設の観覧席が設けられており、川を進む船の姿を間近で見ることが可能。堺筋本町周辺の道路沿いや、大川を渡る橋からも祭りを観覧できますよ。
天神祭では多くの露店も出店されているので、屋台で大阪名物のたこ焼きやお好み焼きなどを楽しんでみてくださいね。
公式HP | 天神祭|大阪天満宮の公式HP |
開催日時 | 毎年6月下旬吉日 ~7月25日 |
開催場所 | 大阪天満宮境内とその周辺 |
東京の「神田祭」
東京の神田祭は、毎年5月に行われる祭りで、江戸時代から続く伝統行事です。平安装束を来た人々が近代的な街並みを歩く「神幸祭(しんこうさい)」が大きな見どころ。
神田祭の由来や特徴について詳しく見ていきましょう。
「神田祭」の由来と歴史
神田祭は基本的には2年に一度、5月15日に近い土・日曜日に神田明神を中心として行われるお祭りです。
もともとは五穀豊穣や大漁祈願の祭礼として行われていたお祭りでしたが、江戸時代から日枝神社の「山王祭」と隔年で開催されるようになり、現代でもその形が守られています。
神田祭が大きなお祭りとして開かれるようになったのは江戸時代以降。江戸幕府を開いた徳川家康は神田明神で必勝祈願することが多く、関ヶ原の戦いにのぞむ際にも神田明神に戦勝の祈祷を命じていました。偶然にも例祭日である9月15日に家康が合戦に勝利し天下統一を果たしたことから、神田明神はさらに家康の崇敬を集めることとなります。
家康は社殿・神輿・祭器などを寄進して、神田祭を縁起の良い祭りとして大切にするよう命じました。以後、神田祭は重要な祭礼として盛大に執り行われるようになったといわれています。
「神田祭」では平安時代の衣装に身を包んだ大行列・神幸祭が見逃せない
神田祭の見どころは、平安時代の衣装をまとった500人ほどで行われる行列「神幸祭」です。
神田明神の周辺地域を守る神々が3つの神輿「一の宮鳳輦(いちのみやほうれん)」「二の宮神輿(にのみやみこし)」「三の宮鳳輦 (さんのみやほうれん)」に乗って108町会をまわり、町内を祓い清めます。きらびやかな装束に身を包んだ豪華絢爛な行列が東京の街を練り歩く様子は、特に印象的で迫力満点ですよ。
また、神幸祭の後に周辺の町から大小200にものぼる神輿が神田明神へ向かう「神輿宮入 (みこしみやいり)」も見逃せないポイント。揃いの半纏を着た氏子が神輿を担ぐ姿は、まさに日本の祭りらしい活気を楽しめます。
特設ステージで開催される太鼓フェスティバルも見どころで、粋な江戸っ子の心意気を感じられますよ。
「神田祭」の観光体験の魅力
神田祭には多くの屋台や露店が出店し、地元の特産品や食べ物が並んだ賑やかな雰囲気を味わえます。祭りの期間中は多くの人々が集まり、一体感を感じながら祭りを体験できるのは魅力的なポイント。
また、神田明神の境内では、神楽(かぐら)や舞踊など長く受け継がれてきた伝統的な演目も披露されます。普段のオフィス街とのギャップを感じながら、日本文化と活気ある祭りの様子を楽しんでみてください。
公式HP | 神田明神の公式HP |
開催日時 | 5月15日を中心とした数日間 |
開催場所 | 神田明神境内とその周辺 |
日本三大祭には「怨霊鎮め」という共通点がある
日本三大祭りには、それぞれ「怨霊鎮め」という共通点が見られます。
怨霊鎮めとは、人々を脅かすような天災や疫病の発生を非業の死を遂げた人間の怨霊のしわざと見なし、こうした悪霊や災いを祓うことで地域の平和と安全を祈願する日本独特の信仰心のことです。
祇園祭は人々に災いをもたらす「牛頭天王」の祟りを鎮めるため、天神祭は「菅原道真」という強力な怨霊を鎮めるために開かれたのが始まりです。
神田祭は家康が盛大に開催するようになったことで大きな祭りとなりましたが、神田明神に祀られている「平将門(たいらのまさかど)」は日本三大怨霊としても有名です。14世紀に平将門の祟りとされる疫病が流行した際、「将門の首塚」の近くにあった神田明神で将門の霊を供養し、疫病が沈静化しました。現在の神田祭でも神幸祭行列は首塚に立ち寄り、神職が祈りをささげています。
日本三大祭りでは、神輿渡御や神楽舞などの行事を通じて怨霊鎮めが行われています。一見盛大で華やかに見えるお祭りですが、その背景には暗い歴史があることがわかると、また違った面で日本三大祭りを楽しめるのではないでしょうか。
地方に根付くさまざまな三大祭もあわせてチェック
日本三大祭り以外にも、全国各地には地域に根付くさまざまな三大祭りがあります。日本のお祭りに興味を持った人は、特に有名な「東北三大祭り」「日本三大曳山祭り」「四国三大祭り」についてもあわせてチェックしてみてください。
東北三大祭り:青森ねぶた祭・秋田竿燈まつり・仙台七夕まつり
東北地方の三大祭りとして有名なのは、以下の3つです。
青森ねぶた祭
青森市で毎年8月2日~7日まで開催される祭りです。青森市の中心部で開催され、毎年200万人以上の観光客が訪れます。最大の特徴は「ねぷた」と呼ばれる巨大な灯籠で、大きいものだと高さ5メートル、幅9メートルになるものも登場します。歌舞伎や神話などを題材にした様々な絵柄が描かれており、街中を練り歩く姿は圧巻ですよ。
秋田竿燈(かんとう)まつり
秋田市で毎年8月3日~8月6日にかけて開催される祭りです。竿燈(かんとう)と呼ばれる、高さ10メートル以上にも及ぶ提灯を竿に取り付けた巨大な山車が市街地を練り歩くのが特徴。「差し手」と呼ばれる人々が手のひらや額、肩などで絶妙なバランスと技術で自在に操る妙技が披露され、全国から多くの観光客が訪れます。
仙台七夕まつり
仙台市で毎年8月6日~8日にかけて開催される日本最大級の七夕祭りです。数多くのカラフルな短冊や飾り笹が街中を彩り、仙台市内中心部や周辺商店街に様々な催しやイベントが行われます。最近では花火大会や音楽イベントなどの要素も取り入れられ、ますます大きく発展していますよ。
日本三大曳山(ひきやま)祭:京都祇園祭・岐阜高山祭・埼玉秩父夜祭
日本三大曳山祭りとしては以下の3つが有名です。「曳山(ひきやま)」とは飾り物を据えた山車(だし)のことで、どの祭りにも立派な曳山が登場します。
京都祇園祭
本記事でも紹介している京都祇園祭は、毎年7月1日から約1ヶ月間行われる祭りです。日本の数ある曳山祭の中でもっとも歴史のある祭りであり、規模も最大級となります。多くの山車が町中を巡業する姿は一見の価値ありですよ。
岐阜高山祭
岐阜県高山市で毎年4月14日~15日に開催される祭りです。高山市の各町から曳山が集結し、町ごとに特徴的な山車を引き、市街地を練り歩きます。高山祭の曳山は屋台とも呼ばれ、その装飾や彫刻の豪華さから「動く陽明門」の別名でも人気を集めています。
埼玉秩父夜祭
埼玉県秩父市で毎年12月1日〜6日にかけて開催される秩父神社の例祭です。山車の引き回しや花火大会でも知られています。花鉾や屋台を曳航する一連の行事・秩父屋台囃子・秩父歌舞伎・曳踊りなどが見どころで、「秩父祭の屋台行事と神楽」として国の重要無形文化財にも指定されています。
四国三大祭り:徳島阿波おどり・高知よさこい祭り・新居浜太鼓祭り
四国地方で開催されている祭りの中で、特に有名な四国三大祭りについて見ていきましょう。
徳島阿波おどり
徳島市で毎年8月12日~15日のお盆期間に開催される「阿波おどり」は、約400年以上の歴史を持つ伝統芸能です。踊り手が「阿波踊り」を踊りながら、派手な衣装や太鼓の音色が街中に響きわたります。日本三大盆踊りのひとつにも数えられ、全国的にも有名なお祭りです。
高知よさこい祭り
高知市で毎年8月9日~12日までの4日間にわたって開催される「よさこい祭り」。もともとは戦後不況の中で経済再興・地域振興を目的に始まり、現在でも夏の土佐を代表する祭りとして人気を集めています。カラフルな衣装を身に着け踊りや太鼓演奏を行うなど、多彩な演目が見どころです。
新居浜(にいはま)太鼓祭り
愛媛県新居浜市で、毎年10月16日~18日に開催される新居浜市の伝統的な秋祭りです。もともとは豊作を祝う秋の神事として行われていました。見どころは複数の太鼓台が集まり競い合う「かきくらべ」。重さ約3tの太鼓台を約150人の担ぎ手の力で天高く持ち上げる様は迫力満点で、太鼓台のかき夫(担ぎ手)は、男性のみとなっているため「男祭」とも呼ばれます。
さまざまな魅力のある四国三大祭り。観光と合わせて、気になる方はぜひチェックしてみてください。
日本三大祭りのまとめ
日本三大祭りである京都の祇園祭、大阪の天神祭、東京の神田祭は、それぞれ独自の歴史と伝統を持ち、観光客や地元の人々に多くの魅力を提供しています。
これらの祭りは、日本の文化や風習を体験する絶好の機会であり、日本を訪れる際には必見のイベントです。祭りの迫力あるパレードや装飾、地元の人々の情熱的な参加に触れることで、日本の伝統と祭りの魅力を存分に味わってみてください。